会津駒ヶ岳/平ヶ岳
週刊日本百名山 第43号 定価560円 2001年11月8日号 朝日新聞出版局発行
最新の平ヶ岳の情報としてある程度まとまった登山ガイドとしてはこれぐらいしか無いため、平ヶ岳登山を計画している人はこのシリーズの「平ヶ岳」の発売を待ちかねていたのではないでしょうか。他の山についても同様と思われますが、最低限の登山ガイドと周辺情報、エッセイなど箱庭的(幕の内弁当的)にそつなくまとめてあるという感じで、560円の週刊誌の域をでていません。本来ならば社会問題としての平ヶ岳シートカット登山道の問題、山小屋がないための屎尿処理での山岳環境保護にも少しでも触れて欲しかったところです。では内容を詳しく見て行きましょう。後半のページ19から34までが平ヶ岳に関しての情報ですべてフルカラーとなっています。
深田久弥『日本百名山』─平ヶ岳─ (19ページ)
深田久弥による『日本百名山』の中の平ヶ岳の文章を全文を掲載している。池ノ岳の湿原の写真が1枚
広く平らな山頂が個性的な利根源流域の最高峰 (20、21ページ)
見開きのカラー写真一枚、仁井田研一氏による6月の残雪のある平ヶ岳の北側を姫ノ池より撮影した写真。平ヶ岳の全貌を見渡せる場所は、正規の登山ルートからはこの位置しかないと思われ、登山者はかならずこの風景を見ることになります。
Outline:
変貌しつつある“太古のまま”の山/三宅 修 (22、23ページ)
山岳写真家と紹介されている三宅修氏だが、掲載されている4点のカラー写真はすべて仁井田研一氏による撮影(5月または6月)。文章は比較的平ヶ岳の特徴をよく掴んだ記述となっている。正規ルートの鷹ノ巣ルートと闇ルートに相当する中ノ岐林道コースについて問題にさらりと触れ、玉子石、豪雪地帯特有の非対称山陵のこと、ホソミモリトンボ、草原の裸地化の問題と広く浅くひととりの説明がなされている。
Planning:
ビギナーにためのプランニングガイド (24、25ページ)
一本のルートをたどり「秘境の山」へ!/構成:伊藤幸司(朝日カルチャーセンター講師)
この部分が登山ガイドとなっているが、本来のルートの解説としては情報が非常に少ない。
ルートシュミレーション・マップ称して標高差50mと水平距離500mごとの鷹ノ巣からの登山ルート上にマッピングしてある図が参考になる。1プロット、7〜10分と計算しておよその通過時間算出できるようになっているが、その詳しい説明は省かれている。それ以外には1/6万の地図と交通機関、宿泊施設、関係連絡先の情報、カラー写真6点が掲載されている。
CGパノラマ:
平ヶ岳 鳥瞰図制作:TUBE GRAPHICS(デザイナー:長谷川さちこ) (26ページ)
地形図の感覚では南側より北側をみる視点が一般的な感覚だが、ここに描かれている鳥瞰図は只見湖北西から南方の平ヶ岳を見たもので、尾瀬の至仏山と平ヶ岳、只見湖の位置関係がよくわかり非常に新鮮なイラストとなっている。恋ノ岐沢より登るグループがあるが、通常の登山ルートとの位置関係が分かりやすく描かれている。ちょっと画像が小さく細部は見えませんが、鳥瞰図のイラストが全面に描かれています。左下に重要な情報がさりげなく掲載されている平ヶ岳の豪雪地帯特有な地形(ヒド、アバランチシュート、積雪量)についての解説をお見逃しのないように。
Essay:
山の魅力を教えてくれた生まれて初めての山・平ヶ岳/足立倫行(ノンフィクション作家)(27ページ)
この記事は問題です。登山時期とルートが問題なのです。個人的な雑誌記事や書籍ならいら知らず、公式なガイドブックに近く、公的使命を自任する朝日新聞社の出版物として、最近では社会問題にもなって来ている闇ルートである中ノ岐林道ルートからの山行記録を堂々と掲載する朝日新聞出版局の神経が疑われます。一番下に目立たないような小さな文字で「中ノ岐林道ルートは、平成13年8月現在通行禁止になっています。」と書かれて、いかにもこの記録である1996年(平成8年)の段階では通行可能といいわけしているように書いてありますが、実際に私有地として通行禁止のゲートが設置されたのは8年も昔の1988年の7月から。問題は登山に慣れていないひ弱な体でも短時間で簡単に平ヶ岳の山頂を極めることができる中ノ岐林道コースを正式な紹介記事と誤解されるように書かれていることです。
Highland Nature:
池塘にすっくと立つカキツバタの美しさ 撮影・文/大内尚樹 (28ページ )
シャクナゲ、コミヤマカタバミ、ニワトコ、カキツバタ、キバナシャクナゲの高山植物の写真5点。高山植物を観察するのに最適な時期は6月中旬から10月初めまでとの紹介。ここに記載されている高山植物名は、アカミノイヌツゲ、ナナカマド、ニワトコ、ツルリンドウ、ユキザサ、アカモノ、オオバタケシマラン、ムシカリ、ツルコケモモ、ヒメシャクナゲ、カミノイヌツゲ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、ニッコウキスゲ、キバナシャクナゲ、アヤメ、カキツバタ、コンコウカ、イワショウブ、ミツガシワ、イワイチョウ、ハクサンコザクラ、モウセンゴケ、ワタスゲ、コミヤマカタバミ。
Refreshing:
“日本一”の広さをもつ露天風呂とブナに囲まれた山小屋のいで湯 撮影・若林純 (30、31ページ)
ここでは最寄りの温泉となっているが、尾瀬の渋沢温泉を除いて3件の温泉は新潟県側のもの。只見湖方面への紹介であり、宝川温泉にいたっては、尾瀬の湯ノ湖方面、水上温泉の奥ありとても平ヶ岳の帰りにちょっと寄れる位置にはない温泉である。どうしてこのような温泉の紹介となっているか理解に苦しむが、本来は尾瀬の御池からのルートで来る登山者が多いことを考えれば、14、15ページに紹介されている会津駒ヶ岳付近の檜枝岐温泉、湯の花温泉、木賊温泉こそ紹介にふさわしいところである。
Trekker's Break
みちくさ・やま道・ふもと道 撮影・文/若林純 (32、33ページ)
只見湖から小出までの新潟県側の観光スポットの紹介。「開高健と奥只見湖」で釣り関係の話、「奥只見湖」で水力発電の話、「銀山供養塔」で江戸時代の銀鉱山の話、「ゆのたに手づくり村」で地元湯之谷村の物産販売の話がでている。平ヶ岳へのアプローチを新潟県側からとる場合には参考になるが、福島県、東北自動車道からのアプローチをとるひとにとっては、「会津駒ヶ岳」のTrekker's Breakにある檜枝岐村の周辺情報の方が役に立つ。
インターネットで旅する名山情報、百名山ネットレッキング (34ページ)
最後の奥付けページには関連するwebサイトのURLが4件掲載されている
パーフェクトあいづ:会津地方の観光案内ポータルサイト
奥只見郷案内:奥只見郷の総合案内サイト(これも市町村合併により現在消滅しているようです)
小白沢ヒュッテ・奥銀山キャンプ場ホームページ:平ヶ岳、尾瀬の現地ならではのきめ細かい情報提供
湯之谷村ホームページ:当時の平ヶ岳を管轄とする地元の村の公式webサイトでしたが、2004年11月1日から町村合併で魚沼市となり、平ヶ岳の情報は魚沼市観光協会の中に一部存在しています。
さてこの週刊日本百名山は2001年の年末の第50号をもってすべて刊行を終えたあと、この企画が好評だったのか、新しい企画力が無かったのかわかりませんが、柳の下のドジョウを狙って、似たような内容で週刊続日本百名山が全部で30巻刊行されました。同時にこの週刊日本百名山の雑誌50冊をまとめて2冊に分冊して登山ガイドとして出版しています。
この登山ガイドは、
日本百名山ビジュアル登山ガイド (上) 朝日新聞社編 1,575円 2002年3月22日発行
オールカラー240ページ、「週刊日本百名山」全50巻から、モデルコースガイド、地図、高山植物ガイド、温泉情報などの基礎的情報をコンパクトに抜き出しって再編集されたものです。
朝日新聞社のwebでの紹介
平ヶ岳はP122〜125 地図1点、風景写真2、高山植物写真2、高低図1、非常に良く出来ていた只見湖から俯瞰したイラストは残念ながら掲載されていません。